新豆の販売をスタートにつき、村上農場のお豆の話

農場では、28年度産の新豆の販売がスタートしています。
昨年は春からの曇天、ゲリラ豪雨、台風と苦労した年でした。
幸い花豆など、竹の手が必要なツル性のお豆は少し高い場所に育てていた為に難を逃れましたが、その他一部の品種については生産量が激減しており、販売量が僅かになったものもあります。
在来種などはお早めにお問合せ下さい。

さて、今回は少し、農業者向けのお話しになります。

私達の農場では先々代からの数十年来、地域の農家さん同様に、金時・うずら・大豆・小豆等の丈の低い豆を栽培し、雑穀問屋さん等に卸す仕事を続けていました。
販売を始めたのは10年ほど前、ジャガイモの販売から一年遅れてスタートでした。

当時、じゃがいもと併せて販売できる品目を検討しており、それはお客様からのリクエストが多く、且つ、農場長が栽培を得意とする相互性があるもの考えていました。
農場長が曰く、一つの野菜の道をある程度極めるには10年が掛かるそうで、新しく着手するよりは今持っているカードの中から展開させた方が、農場にとって最も無理がなく、また、お客様にも喜んで頂ける近道になると考え、ちょうど上手く、お豆が当てはまった形になります。

 

正式に販売が決まり、農場のパンフレットに豆が掲載された同年、私たちはツル性の在来種の栽培に踏み切ります。
その頃、じゃがいもの多品種栽培は20種類を超えており、お豆においても既存の品種以外の多様性を求めたのは自然な流れでした。

ただ、当時も今も、豆処の十勝で、ツル性の豆の栽培を見かける事は殆どありません。
つい5年ほど前までも私たちの畑を見て、雑穀問屋が飛び込みで買い付けに来る様な事もり、必要とされながら生産量が少ないのが現状です。

 

その理由の一つは、ツル性の豆の栽培が非常に重労働であること。
中でも一番大変なのは、ツルを這わす「手」と呼ばれる3メートルほどの細い竹を畑に刺し、数本一組を高い位置で組み、紐で縛る作業です。当然すべて手作業で行い、収穫後にも紐を解き、一本ずつ抜いて格納する作業が待っています。
現在、私達の農場では約3万本の竹の「手」を使い栽培をしています。
ちなみに、北海道には竹が無い為に一本50円程で購入し、数年で使えなくなりますので、かなりの投資になります。

 

 
一般的にツル性の豆を庭先で栽培し、自家用とする場合と圃場で栽培する場合の決定的な違いは、栽培技術と生産性ではないでしょうか。

自家用の場合は竹の手を立て・組む作業において「曖昧さ」が許されますが、圃場での栽培では「曖昧さ」は、重労働、時間に対する生産性・収量低下に繋がります。
 

生産をボランティア的に行うのであれば、生産者への負担は延々に続きます。
「ボランティア的」というのは、生産者がどこか自己犠牲を感じてしまう事です。
これは生産者が陥りやすいケースで、栽培・販売共に自己犠牲を伴う仕事は精神的にも肉体的にも負担となり、結果、「儲からない嫌な仕事」と捉え、「もう止めたい、やっても仕方ない」と考えてしまいます。
でも、実はその負担は「こうでなければならない」「こういうものである」という思い込みから来る事が殆どです。歪(ひづみ)が生まれる場所には必ず矛盾がある訳で、色々な局面でこうした状況が発生しますが、根本的な見直しをし、解消していかなければ、その先には進めません。
生産から販売まで一貫すればするほど発生しがち、それらを単独で行うからこそ、歪を力で解決しようとする事が原因だと思います。
殆どの場合は、お客様を思う気持ちや優しさ、使命感から発生するのだと思いますが、続かない事には意味がありません。

 

私達の場合、ツル性の豆については少量生産する技術の伝承もなく、竹の手を刺し組む技術について教科書はありませんでした。本当に知りたい事は、ネット検索は勿論、専門書にも一切出てきません。
その為、栽培開始時には、北見地方のツル性の豆の栽培が多い地域にスタッフと共に車を走らせ、大規模栽培が無い為に仕方なく少規模生産する方の畑を盗み見て勉強を続け、そこから独自の技術の構築をしていったのですが、当時はそれほどの量を栽培していた訳ではなく、使う竹の「手」も、たかだか2000本余りの本数でした。
一万本を超える辺りから色々な意味で苦しくなり、残念ながら先に上げたボラティア的な意識を持つようになり苦悩し始めるのですが、この竹を立てる重労働は意外にももの凄く達成感があり楽しい仕事でもあるので、(農業というものは、おおよそ達成感を感じない仕事が多いものです)止めたくなかったですし、お客様の声も大きかったのです。また、無くなりつつある在来種を農業者の手でどう守るかという気付いた責任もありました。そこで、生産ベースへ乗せるべく、量産する為の竹立てや竹組み、栽培技術の見直しと向上を図り、様々な方法を試して今日に至ります。

今では、竹の手を使ったツル性のお豆の多品種栽培では、恐らく私たちの農場が北海道での最大規模ではないかと思います。 竹の「手」を3万本使い、全て単年度で農薬・化学肥料を一切使わない栽培となると一般の家族経営の農家では不可能に近いものがあります。

十数年前、農薬や化学肥料を万度に使用する慣行栽培から、特別栽培・農薬や化学肥料を使わない栽培へと移行を進める中で、一番ネックだったのは十勝型の大規模農場であることでした。ところが、取り組む中で気が付いたことは、「大きいからこそできる仕事がある」という事です。
熟成じゃがいもを作る中、冬季も万度に仕事がありスタッフがいるからこそ、春から秋まで除草剤を使わない。化学肥料や農薬に頼らない。それを大規模で。
こうした取り組みは、私たちの農場だから出来る仕事だと思います。

 

たまたま、知り合いが縁のあった農家さんが竹立てを始める際にネット検索をしたところ私たちの農場の画像が出てきて、それを見ながら始められたという話を聞きましたが、この辺りの技術については、取り組まれる農業者の方にお伝えすることも私たちの役割だと思っており、面識のない方でも遠慮なくご連絡頂ければと思っています。
立て方だけでなく、立てる前の竹をどう効率よく移動させるか等色々あります。

                                                                                                                              さて、この後、収穫したお豆をどうするか。
その先のお話しに続きます。

 

村上 智華 担当 電話受付・販売

熟成させたじゃがいもの味や質を見極め、販売時期を決める仕事を担当しています。お電話では、個人のお客様からプロの方まで、品種ごとの熟成状態をご説明したり、料理合わせのご提案をしております。お客様と人として寄り添い合い、長いお付き合いを築けたらと思っています。

1 / 11