総括!2017年じゃがいもの熟成

 

2017年のじゃがいもの総括です。


経験したことのない熟成パターンに行きついた、衝撃のシーズンでした。

3月半ば過ぎに雪下熟成のティスティングから、私の頭はずっとフル回転。2017年のじゃがいもの熟成に向き合い続けて、やっと一つの結論に達しました。それはある意味、小さな事かもしれませんが、これまでの私には無い概念でしたので、今はじゃがいもという一つの野菜から、この結論を導き出せたことに自分の成長も感じ、とても満足しています。

こうした長い文章をブログに載せることは、自分の中でも賛否はあるのですが、生産者にしか分からない知識や想いを、消費者の皆さんや生産に携わる方々へ向けて発信することも、生産者の重要な役割だと思います。
長くマニアックな内容ですが、最後までお読み頂ければ光栄です。

販売中の雪下熟成じゃがいもが、謎を解くきっかけとなったので、雪下熟成を軸にご説明させて下さい。

 


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今年の雪下熟成は比較的穏やかな味わいに仕上がりました。料理にも使いやすいです。
心配もあったのですが、おかげさまでお取り寄せのリピートの御注文も多く、ホッとしています。

13年ほど前、文献の無い中、自然環境下でのじゃがいもの貯蔵試験をスタートさせ、その後、偶然の副産物として、雪下での熟成に出会いました。今では、約20トンを埋め込む技術も確立しつつありますが、屋外での熟成のコントロールは難しく、未だに失敗もあって、試行錯誤の連続です。

通常、雪下熟成の埋め込みは凍結のダメージを考慮して、寒さが厳しい日や降雪の日は避けるのが鉄則なのですが、今シーズンは埋め込みの時期に強い寒波が居座って、大変でした。結局は10日程の天候回復待ちとなったのですが、埋め込みを先延ばしすると熟成期間が不足する恐れがある為に、それはもう、天気予報と睨めっこで・・・。結局はやむ負えずに、最低条件を満たした日に強行突破となりました。

 

迎えた第一回目の堀り上げ予定日。
一部を掘り起こし、第一回目のティスティング、その結果を見てその後の仕事の流れを決めるのですが、この試し掘り出し、大きな雪山を掘らなければならないので、かなりの労力が必要なのです。加えて、雪山を掘る事で外気が雪の下に侵入すると、雪の下の空気の成分バランスが崩れて熟成に影響する為、私たちは、出来ればこの日に初回の堀り上げを済ませたいと考えています。

この日の試し掘りでは、雪山の西側で、約1トンのじゃがいもが凍結している予測が付きました。低温での埋め込みの強行突破、そして、この冬の低温が原因でしょう。
ティスティングでは残念ながら私達が考えていた以上に熟成が進んでおらず、検討を重ねた結果、更に一週間の追熟を掛けることにしました。ただ、凍結したじゃがいもを一週間置くことは、傷んだみかんを一緒に保管するのと同じく、健康なじゃがいもへのダメージを助長させ、歩留まりを悪くすることになります。悩ましい事ですが、それでも一週間の追熟は、どうしても納得の出来る味を作る為に必要な時間でした。

最終的には、堀り上げを7日~14日遅らせ、理想の埋め込み日数を万度に満したのですが、これ以後、時間を追ったティスティングの度に、常に私は2週間後の味を考えてしてしまう、そんな年でした。
つまりは、熟成スピードがとにかく遅かった。その一言に尽きます。

 


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雪下熟成で感じた熟成の遅さは、今シーズンの通常熟成、全ての品種にも通じていました。
通常12月から変化が見られる様な品種が、2月に入っても糖変動や水分率の変化などを感じない、経験したことのない状況でした。

そこで当初、私はじゃがいもの熟成の遅れた理由を、二つ考えました。


一つ目は、11月~1月10日頃迄の外気温の高さが熟成を抑制した可能性。
じゃがいもの熟成は外気温が0℃に近付くと急速に進む為、11月、12月の気温の影響を受けやすいのです。
今シーズンは殆どの品種で概ね3か月以上、熟成に遅れが出ました。
特に難しかったのは、ヨーデル、アンデスレッド、レッドムーン、デストロイヤー(グランドペチカ)などの赤皮品種。この様な赤皮品種は、熟成変化が激しい為に、大きなエネルギーが必要になります。栽培技術は勿論、収穫のタイミング、収穫後の保管の温度帯、とてもデリケートなんですね。

 

二つ目は、豊作で球数が多かったことが、何らかの影響を及ぼし、熟成の力が抑えられた可能性です。
果樹は剪定が出来る為、一本の木から選ぶ作業が出来ますし、私達の農場で言えば、南瓜の蔓(ツル)の剪定作業も同じ意味があります。複数の蔓を伸ばすと玉数が付きすぎて、品質の良いものが採れないため、全ての株に関して蔓の剪定を行います。(北海道では放任栽培が多いので、この作業をする農場はそれほど多くないと思いますが)ただ、じゃがいもの場合は選定して数を絞る訳にはいきませんし、まして、豊作を嫌がる農家なんている訳もなく。
この様な考え方は、発想の転換から生まれるもので、常識的ではありませんが、視点を高くし、想定外を考えなければ答えは導き出せません。色々な角度から考えなければならないのです。

 


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ただ、もう一つ、どうしても払拭できないことがありました。
それは、澱粉価です。

2017年は栽培期間中、好天に恵まれ、数十年に一度の類を見ない豊作年、つまりはお芋の当たり年でした。光合成も充分で、じゃがいもには沢山の澱粉が蓄えられていました。収穫時の状況を見ても全ての品種が、美味しい熟成を辿る事が予想ができ、条件は揃っていたのです。

少し乱暴な言い方になりますが、私が考えるじゃがいもの熟成は、でんぷん質が、糖・粘り・アミノ酸に変わる、そしてそれに伴い水分率が変化すること。
つまり、皆さんが甘みや粘りを感じる熟成は、ネガティブに表現すると“澱粉がへたれる”という表現にもなります。

これまでの経験では、健全育成させて澱粉含んだじゃがいもは、糖化・粘化の振り幅は大きくなりますし、未成熟なじゃがいもは振り幅が小さくなるのが定説でした。
ところが、今期のじゃがいもに関しては、その方程式が当てはまりません。4月に入った今も、殆どの品種で糖度や粘り・水分率が上がらず、逆にホクホクと澱粉を保っている状態です。
今年の熟成の最大の謎は、この変化しない澱粉でした。

 


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何故、澱粉が変化しないのか。
それは、2017年の全ての状況を照らし合わせると、じゃがいもの持つエネルギーが強すぎたことにあるのではないでしょうか。

私は、熟成が進まないことに、ネガティブな要素ばかりを探していたのですが、それは間違っていた様に思います。恵まれた天候と生産者の技術が融合した結果、エネルギーの強いじゃがいもが生まれた。それは、澱粉の力が強く、糖化・粘化・水分率、共に変動しにくい。だから、そのじゃがいもの熟成は、当然、遅れます。何故なら、ある意味、熟成は劣化とも言えるからです。

例えるなら、ワインを想像して下さい。恵まれた年故に、飲み頃が遅くなる。
恵まれた年よりも、そうでない年の方が飲み頃が早く来る。
そして、熟した後は静かに枯れていきます。

 

 以上、単純にじゃがいもの熟成から、この様な考察に至るとは思いもよりませんでしたが、これが2017年度産のじゃがいもの熟成についての私の結論です。
これで私、ようやく2017年度を卒業出来そうです(涙)

 

この結論が皆さんにどう響くかは分かりません。小さい様に思えるかもしれませんが、私にとってはとても大きなことでした。だって、今まで、良い物を作ることだけを考えてきたのですから。
何でもそうだと思うのですが、大きなことより、日常にある様な何でもない事に気付くことの方が、ずっと難しい。こうした積み重ねが何より大切だと思いますし、
慢心せず、自分自身を掘り下げていく大切さを、改めて感じました。



またまだ、2017年産のじゃがいもの販売は続きますよ!
そして、こんな熟成の年だからこそ、これから仕上がるお芋も多くなってきます。この後も引き続き宜しくお願いいたします!!

 

 

※ちなみに、雪下熟成は自然環境下で行う為、外気温や雪解けなども影響して、遅くても3月末には掘り上げなければなりません。また、雪下熟成の試験は最低でも500キロのじゃがいもが必要だと考えています。販売数量にプラスして、試験用のじゃがいもが500kg程度必要になります。今年は凍結被害も大きかった為、その余裕がなかったのが、とても残念!最も平気で500キロの試験をする辺りが、村上農場のおかしな所なのですが。

村上 智華 担当 電話受付・販売

熟成させたじゃがいもの味や質を見極め、販売時期を決める仕事を担当しています。お電話では、個人のお客様からプロの方まで、品種ごとの熟成状態をご説明したり、料理合わせのご提案をしております。お客様と人として寄り添い合い、長いお付き合いを築けたらと思っています。