農場コラム

お買い物ページを設けさせて頂く事となりました。

人にはそれぞれの生活があり、そこに、それぞれの「食」があります。

味覚、食べたい料理、体調、家族、仕事、そうしたものが関係し、その時求める「食」は、お一人おひとり違う。だからこそ、お客様に寄り添ったお付き合いが私の心情です。

その為、ヒアリングの為のコミュニケーションを第一に考え、ネットでの販売は意図的に避けてきました。
お電話でご注文を賜るのではなく、「お話を伺う」という姿勢です。
ですから、村上農場はパソコンでは管理できない様な、細かなお声にもお答えしてきたつもりでいます。

 

ただ、お客様を最優先するあまり、自分自身もスタッフにも随分無理をさせてきました。
二年ほど前に、土曜日のお電話の受付を止めて仕事の見直しをする中で、

今の私と十数年前の私に、ずれがないか。
これまでの客様とこれからのお客様が求めるものに、ずれがないか。
これからの未来、自分にとって、皆さんにとって、の幸せは何なのか。

ずっと考えてきました。
そんなある日、初めてお電話頂いた80代の女性が、「タブレットでHPを開いているのですが・・・」とお話された事で、私の中で何かが弾け、具体的にホームページでの販売について考えるきっかけを頂きました。
十数年前には思いもつかなかった様な今の私が居て、お客様の求める形も多様化している。日々、新しい可能性が生まれている今、全てのリサイズが必要で、次に進むことは必然でした。

 

少し遡りますが、17年程前になるでしょうか。
私は、当時どこの町にもあった某有名小売店で、生産者の顔が付いた野菜が販売されているのを初めて見て、大きな衝撃を受けました。この頃、野菜に生産者の写真が付くことは殆ど無かったのです。
その時の私は、このサイズの売り場でお客様が生産者を意識するのであれば、いずれこうした世界を追求する世の中になるだろう。農業を生業としている者として、この先どの様な方向性を持って仕事をし、生きるのか、早々に答えを出さなければならない時代に入ったと思いました。
ある種の焦りや、危機感、時代のうねりを感じたのだと思います。(後になってそれがご縁のあった徳江さんやまけんさんが取り組まれたお仕事と知るのですが)

時を同じくして、私たちは多品種の栽培に取り組み始めていました。
この頃、家庭に少しずつパソコンの普及が進んでおり、農業界でも「ホームページで儲ける!」といった情報が飛び交い始め、ごく一部の農業者さんがHPを開設し始めた時代でした。
農協を通さずに直接販売していると話すと、誰もが「インターネットで売っているの?」と尋ねてきたものです。ちょうど楽天市場が大きく成長し、ネット上で農産物や地方の商品が高額で販売し始めて、地方を訪れずともネットでの選び買いが可能になっていました。その殆どは地方産品を販売する企業だったと思いますが、そうした時代背景のもと、農業者にとってネット販売は、益々、「全国のお客様と直接繋がる・売れる」術や希望となって、最先端のキラキラワードであった様に思います。
当時、私自身はホームページでの販売について、自分の望むようなお客様との接点や信用が簡単に得られるものでもないと考えていたのですが、だからと言って、周りを見渡しても、個人流通をさせていた先輩農業者の殆どは、直接お客様へ販売するのではなく、卸業者への納品を行っていました。

私はそのどちらの仕事に全く興味が無くかった為、これまで両方を避けて独自の道を歩いてきました。
思い起こせば、どれも簡単ではなく、苦労ばかり、前例のない事ばかりでした。
でも、本当に運良く、私たちは沢山の方に仕事を認めて頂き、沢山の方々の支えを頂いて、ここまで来ることが出来たと思います。つくずく幸運でした。
そして今、感謝と共に感じるのは、どんな選択にも間違いはなく、どの道を通ってもここに辿りついたのではないか、ということです。ご縁のある方、お客様とは、どうやっても繋がるものではないでしょうか。

そう思えるのは、これまで私が目標とし、重要視していたものが、単なる販売の形ではなく、選ばれる為の「優れた仕事」だったからです。誰もが心から圧倒的に美味しいと思えるものを、丁寧にお届けする。そこにずれさえなければ、結果は同じ様に思えます。運よく時代の流れに乗ったとしても、時が過ぎれば化けの皮は剥がれてしまう。でも、技術や信念は、他人が助けてくれるから身に付くものではなく、ひたすらひたすら、自分が仕事と向き合う他、得られないものです。それは逃げ場がなく、自己責任が付きまとう、辛いものです。でも、絶対に裏切らないし、自分が成長し続けてさえいれば、不変のもの。

今、私が昔の自分に会えたとしたら、自分の姿にきっと泣いてしまうと思うし、過去の自分に、「そんなに頑張らなくていいんだよ」と、言ってあげたい。
でも、ある意味、時代の流れよりも自分の信念を重んじて、やり切った、とも思います。
だからこその、次のステップです。
沢山のお客様の支えがある農場として、ホームページ上でお買い物かごを設ける事が出来たことは、無からのスタートではなく、お客様がご利用しやすくという、既にもう沢山の幸せを抱えている状態のスタート。小さなニュアンスの違いですが、私はとても満足しています。

ホームページでは、お電話とは違って便利なことが沢山あります。
もちろんお電話でのご対応も引き続き変わることはありませんし、お電話の方が便利な事も沢山あります。
皆さんに自由にご選択いただけることが、私にとっての何よりです。

今回、農場のHPを作成して頂くにあたり、三名の方にお世話になったのですが、農場の現行の販売体系がマニュアルには収まりきらないほど複雑なもので、納めて頂くのは並々ならぬエネルギーが必要だったと思います。藤谷さん、末永さん、小川さん、本当にお世話になりました。
更に、お買い物ページでは、カメラマンの本田匡さんにご無理を言ってご協力頂き、素晴らしい写真を撮って頂きました。ピンセットでお豆をつまみながら、多品種のじゃがいもやお豆を撮る、大変なお仕事を心良く引き受けて下さいました。

ご尽力頂いた方々の下支えがあって、沢山の幸せがあること、心から感謝の気持ちで一杯です。

これまでネット販売をしない事が“ある種の売り”だった私たちのこうした取り組みに、姿勢を崩したのかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、私はこれを大きな大きな飛躍だと思っています。
私は、そして村上農場は、一歩踏み出した可能性を楽しみに、次のステージに向かいますね。

これからの村上農場も引き続きどうぞ宜しくお願い致します。

 

 

 

村上農場 村上智華

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